紅ずきん・1話
2008 08/21(Thu) 23:54 |
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チリリリ〜ン♪
鈴の音が聞こえたら気をつけて。
君を食べに来た狼が来る証拠。
でもきっと君は優しいから、狼を迎え入れてしまう…。
だからその時は…。
ピピピ… ピピピ…
朝…今日も憂鬱な朝が来た。
カチッ
目覚ましのスイッチを切る。
「うーん…。」
眠たい。寝ていたい。でも時間とアイツがそれを許してくれない。
チリリン♪
鈴…?アイツ?…それとも…狼…?
窓から入ってきた誰かは、いつもどーりアイツだった。
「杏樹、起きろよ。いーかげん。」
7時39分。この時間に、くるいもなくアイツはここに来る。
アイツ、幼なじみの本町拓也。
隣に住んでて、いつもアタシを起こしに来る。
アイツはいつもアタシが起きないのを知ってるから、布団ひっぺがして、とりあえず布団の外に出させる。
布団から出ちゃうとしょーがないから、アイツを追い出して着替えて、8時10分ぐらいに2人のりでアイツの後ろに乗って登校。
そんな毎日。
アタシには両親は居ない。
昔、アタシが7才の頃、自殺した。
何故自殺したのか分からない。
誰もが理由を知らなかった。
ただ…もう一つ不思議な点があって…
そう思った瞬間にアイツが、こいでた自転車をとめた。
「到着っ!…何ぼーっとしてんの?」
「えっ…あっ、昔のこと…思い出しちゃったの。あと…今日の夢…。」
今日見た夢。
昔誰かが言った一言。
小さい頃に良く見た夢で…最近みてなかったけど今日、久々に見た。
「あのね、男の子がアタシに言うの。
“鈴の音が聞こえたら気をつけて。
君を食べに来た狼が来る証拠。
でもきっと君は優しいから、狼を迎え入れてしまう…。
だからその時は…。”
…あれ?」
その時は…
…その後の言葉が分からない。思い出せない…。
アタシの中のかすかな記憶。昔ははっきり覚えてた。だけど“彼”が優しい笑顔でアタシに言ったその言葉は、いつしかアタシの中で消えていってたのだった。
「その時は??何なんだ?」
「…忘れた。……昔は覚えてたんだけど。」
「狼は?」
「……来てない。」
呆れ顔の拓。はぁー、とため息を出しながら自転車を駐輪場へとめる。
2話
2008 08/21(Thu) 23:54 |
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アタシと拓は自転車を降り、教室へ向かっていた。
廊下を歩いていると、見たことのない男の子が前から歩いてきた。
(転校生…?)
姿は、すれ違えば目が引き寄せられる程の格好良さで、周りの女の子は全員見とれていた。
だけどその転校生っぽい人は、アタシを見るなり顔を輝かせて、そして真っ直ぐとアタシの方へ来た。
そしてアタシをぐっと抱きしめ、言った。
「杏樹!会いたかった!!」
転校生のはずの彼はアタシを知っていた。
それはアタシのクラスの転校生。
名前は佐藤一也。
佐藤君は私の隣の席になった。
「久しぶりだね。杏樹。」
佐藤君はアタシにそう言って、笑った。
どこかで見たことのある笑み。
アタシと佐藤君は、会ったことがあるのかと聞いた。
「君を守りに来たんだ。」
一言そう言って、また笑った。
不思議な笑み。懐かしくて、どこか温かくて…
でも…その温かさが怖い。なにか…どこかで…
記憶を掘り返し、4才ほどまで思いだしかかったとき、誰かの声がした。
“君を守る。”
穏やかだが、芯のある声、そう、この声は昔良く遊んでいた…カズ…
そう思うのとほぼ同時に佐藤君は一言言った。
「一也。…昔はカズくんって呼んでくれたよね。杏。」
杏。その一言が私の閉じられていた記憶をひらいた。
3話
2008 08/21(Thu) 23:54 |
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杏は、昔、カズくんにだけ呼ばれた言われたあだ名。
昔、引っ越してきたばかりで、泣いてばっかりだった男の子がいた。
泣いてばっかりで、何も言わないその男の子は毎日のようにいじめられていた。
それをアイツ、拓と一緒に助けたのがキッカケで、アタシと拓の大親友になった。
それがカズ。一也でカズ。
安易なネーミングだけど、アタシも拓もカズも気に入っていた。
カズも杏と呼んでくれていた。
でも、カズは何かの事情で引っ越しをしなければならなくなった。
“リコン”だとか“ウワキ”だとか、子供の時には良く分からなかったが、町の人達は、カズの親のことで“ウワサ”を色々していた。
そして、カズはアタシに一言残して、この町を去っていった。
それがあの一言。さっき聞こえた声。
その一言の前にも、意味の分からない言葉を残していったが、あまりに子どもすぎたアタシにとっては、聞くことで精一杯で、理解までは出来なかった。
でも“君を守る。”
その一言だけが印象的で忘れられなかった。
「思い出してくれた?」
彼はあの温かい笑顔でそう聞いた。
その日の帰り、アタシはいつものようにアイツと帰った。
夕焼けが黒く染まろうとしている、そんな空、アタシは拓にカズについて聞いた。
拓は上を向いて、少し何かを考えているような顔だったが、一分もしないうちに、ふとこっちを向いて、アイツもまた、笑った。
「カズ…か。…懐かしいな。」
カズとは違う笑い。怖くはないけど…どこか重い。
まとわりつくような…そんな笑み。
アイツはそれ以上、カズについて語らなかった。
アタシも何も言えなかった。
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